解説

RAIN RFIDとは?仕組み・メリット・製品選定・導入事例を徹底解説

RAIN Alliance準拠のUHF帯RFID技術を基礎から製品選びまで網羅的に解説

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RAIN RFIDとは?仕組み・メリット・製品選定・導入事例を徹底解説

この記事の要約

RAIN RFIDはUHF帯を活用し、遠距離かつ複数のタグを同時に読み取ることができる先進的なRFID技術です。物流・小売・医療・製造など、多彩な分野で在庫管理やトレーサビリティの向上、作業効率化に大きく貢献しています。

この記事で分かること

  • RAIN RFIDの基本的な仕組みと特徴
  • 他のRFID技術(HF/LF)との違い
  • 遠距離読み取り・複数タグ同時読取のメリット
  • 物流・小売・医療など主要な活用シーン
  • 導入時に気をつけるべき5つのポイント

RAIN RFIDの概要

RAIN RFIDは、国際標準規格「EPC Gen2(ISO/IEC 18000-63)」に準拠したUHF(860MHz~960MHz)帯を利用するRFID技術です。 名称の由来は「RAdio frequency IdentificatioN」の頭文字と、取得データをクラウドで管理する仕組みを表す「RAIN(雨・クラウド)」のイメージからきています。 UHF帯を使うことで複数のベンダー製品でも相互運用が可能となり、導入や拡張が容易です。また、モノをインターネットにつなげることで、識別・位置特定・真正性の確認に加えて、双方向のやり取り(エンゲージメント)が可能になります。

他のRFIDとの違い

一口にRFIDといっても、使用する周波数帯によって以下のように分類されます。

  • HF(13.56MHz帯):近距離での読み取りに最適
  • LF(125kHz/134kHz帯):動物管理など近接での利用が多い

これらと比較して、UHF帯を用いるRAIN RFIDは、遠距離かつ一括読み取りに強みを持ちます。バーコードのように1つずつ読み取る手間を省き、複数の商品やタグを同時にスキャンできる点が大きな特徴です。

RAIN RFIDの基本的な仕組み

RAIN RFIDシステムは、以下の要素によって構成されています。

リーダー/ライター

電波を使って複数のタグを同時に高速で読み取り、必要に応じてタグへ情報を書き込む装置。読み取ったデータをクラウドやサーバに送信して管理・解析を行います。

アンテナ

リーダーの電波を送受信し、タグとの通信を可能にします。アンテナの形状や配置によって、読み取り範囲や効率が大きく影響を受けます。

タグ(Tag)

ICチップとアンテナを備えたラベル状のデバイス。多くはバッテリーレスでリーダーの電波を利用して動作するため、メンテナンスが容易でコストを抑えられます。

ソフトウェア/クラウド

リーダーで収集したデータを一元管理・解析し、在庫管理や物流管理などのシステムと連携します。クラウド上での管理により、どこからでもリアルタイムに状況を把握できます。

RAIN RFIDのメリット

RAINテクノロジーはUHF RFIDの中でも急速に成長している分野で、すでに世界中で何千億個ものアイテムがRAINタグによって管理されています。ここでは主なメリットを紹介します。

遠距離読み取り

HFやLFなどの近距離用途のRFIDやバーコードと比べ、1m以上(最大数m)の距離から一度に読み取れる利点があります。

複数タグの同時読み取り

バーコードのように1つずつスキャンする必要がなく、一度に大量のタグを高速で読み取れるため、倉庫や工場などでの棚卸し作業が大幅に効率化します。

低コスト化・省力化

タグ単価は年々下がり続けており、大量導入のハードルが低くなっています。また、バーコードに比べて作業者の手間が減るため、人件費の削減にもつながります。

高度なトレーサビリティ

EPC(Electronic Product Code)などでアイテムごとに一意のIDを割り当てられるため、製品の流通経路や使用状況を正確に把握できます。偽造品対策やリコール時の迅速な対応にも有効です。

RAIN RFIDの主な用途

RAIN RFIDは、以下のような業界・分野で広く活用されています。

  • 小売・アパレル:棚卸しや在庫管理、店舗と倉庫のリアルタイムな在庫連携、防犯対策
  • 物流・倉庫管理:パレットやケース、個別商品のリアルタイム追跡、入出庫管理自動化
  • 医療・ヘルスケア:医療機器や薬剤の在庫管理、トレーサビリティ、患者ID管理
  • 製造業:部品の組立履歴や品質管理、出荷トラッキング、生産ラインの自動化
  • イベント・アクセス管理:チケットや入退室管理、偽造防止

導入時に気をつけたいポイント

システム要件の定義

必要な読み取り距離や同時読み取り数、データ活用方法などを事前に明確化しておくことで、最適な機器選定やシステム設計が可能となります。

電波環境の調査

設置場所の壁や機械、金属棚など電波の反射・吸収要因を考慮し、アンテナ配置やリーダーの出力を調整することが重要です。

リーダー・タグの選定

利用環境やコストに合わせ、タグのサイズやメモリ容量、耐久性などを検討します。同メーカー製品や相互運用性が実証済みの製品を選ぶことで、予期せぬ不具合を減らせます。

プライバシー・セキュリティ

タグには個人情報を直接書き込まず、必要に応じて認証や暗号化が可能なGen2 v2/Gen2 v3のタグやリーダーを検討してください。

運用・メンテナンス

タグ貼り付け作業やソフトウェア更新など、定期的な管理が必要です。万が一の機器障害やソフトウェアトラブルに備えたバックアップ計画も重要となります。

RAIN RFIDの市場動向とRAIN Alliance

RAIN Alliance(RAIN RFIDアライアンス)の役割

RAIN Allianceは、UHF帯RFID(RAIN RFID)技術の普及と標準化を推進するグローバルな業界団体です。Impinj、NXP、Zebra Technologies、Avery Dennisonなど、RFID業界を代表する企業が参加しています。「RAIN」という名称は「RAdio frequency IdentificatioN」の頭文字に由来し、クラウドとの親和性を象徴しています。

RAIN Allianceは技術仕様の策定、相互運用性テスト、ユースケースの共有を通じて、エンドユーザーがメーカーを問わず安心してRAIN RFID製品を選択できる環境を整備しています。

RAIN RFIDの市場規模とタグ出荷数

RAIN RFIDタグの年間出荷数は急速に拡大しており、累計出荷数は数千億個を突破しています。小売業におけるアイテムレベルタギングの普及が最大の推進力となっており、アパレル業界では全商品にRFIDタグを貼付するケースが一般的になりつつあります。

タグ単価も量産効果により年々低下しており、1枚あたり数円~十数円程度まで下がっています。この価格低下が、小売以外の物流・製造・医療・食品といった新しい分野への導入拡大を後押ししています。

日本国内のRAIN RFID動向

日本では920MHz帯(916.7~920.9MHz)がRAIN RFIDに割り当てられています。総務省の技術基準に基づき、特定小電力(250mW以下・免許不要)、登録局(構内無線局/陸上移動局・1W・要登録申請)、免許局(構内無線局/陸上移動局・1W・要免許申請)の3種類の運用形態があります。詳しくは「UHF帯RFID機器の電波利用申請ガイド」をご参照ください。

アパレル・流通業界を中心にRFID導入が進んでおり、コンビニエンスストアやドラッグストアでの実証実験も活発に行われています。経済産業省の「電子タグ1000億枚宣言」が示すように、政府も普及を後押ししています。

RAIN RFIDと他の自動認識技術の詳細比較

RAIN RFIDは万能ではありません。用途によっては、バーコードやNFC、BLEの方が適している場合もあります。以下の比較表で、各技術の特性を理解し、最適な選択の参考にしてください。

自動認識技術の総合比較
技術 通信距離 同時読取 タグ単価 主な用途 弱点
RAIN RFID(UHF帯) 1m~12m+ 数百タグ/秒 数円~ 物流、在庫管理、製造 金属・液体に弱い
NFC / HF帯RFID ~10cm 1タグ 数円~ 決済、入退室、認証 近距離のみ
LF帯RFID ~30cm 1タグ 数十円~ 動物管理、入退室 低速・短距離
バーコード / QRコード ~50cm(目視) 1枚 ~1円 POS、個品管理 1対1の読取のみ
BLE(Bluetooth Low Energy) ~100m 限定的 数百円~ 位置測位、IoTセンサー 電池が必要
GPS / GNSS 屋外無制限 N/A 数千円~ 車両追跡、屋外測位 屋内不可・高コスト

RAIN RFID vs バーコード

バーコードは導入コストが最も低い自動認識技術ですが、1つずつ目視でスキャンする必要があり、大量アイテムの管理には不向きです。RAIN RFIDは段ボールを開封せずに中身を読み取ることが可能で、棚卸し作業を従来の1/10以下の時間に短縮できます。

RAIN RFID vs NFC(HF帯RFID)

NFCはスマートフォンに標準搭載されており、決済や認証には最適です。しかし、読み取り距離が数cmに限られるため、倉庫や物流センターでの一括読み取りには適しません。RAIN RFIDは10m以上の読み取り距離と毎秒数百タグの同時読み取りが可能です。

RAIN RFID vs BLE

BLE(Bluetooth Low Energy)ビーコンは長い通信距離と位置測位機能が強みですが、電池交換が必要でランニングコストが高くなります。RAIN RFIDタグはバッテリーレス(パッシブ)のため、メンテナンスフリーで大量に展開できます。

RAIN RFID対応製品の選び方

RAIN RFIDシステムの導入には、リーダー・アンテナ・タグの3つの要素を適切に組み合わせることが重要です。

RAIN RFIDリーダーの選定ポイント

リーダーは「固定型」と「ハンディ型(モバイル型)」に大別されます。固定型はゲートや棚に設置して自動読み取りに使用し、ハンディ型は棚卸しやピッキングなど作業者が持ち歩く用途に適しています。

  • 固定型リーダー:アンテナポート数(2~32ポート)、受信感度、ネットワーク接続方式(Ethernet、Wi-Fi)、PoE対応の有無がポイント
  • ハンディリーダー:読み取り距離、バッテリー持続時間、OS(Android等)、耐久性(IP保護等級)が重要

詳しくは「RFIDリーダーの種類と選び方」をご参照ください。

RAIN RFIDアンテナの選定ポイント

アンテナは読み取り範囲と精度を決定する重要な要素です。円偏波アンテナは角度に依存しない安定した読み取りが可能で、直線偏波アンテナはより長い読み取り距離を実現します。

設置環境(屋内/屋外)、読み取りエリアの形状、IP保護等級も選定時の重要な判断基準です。詳しくは「RFIDアンテナの選び方ガイド」をご参照ください。

RAIN RFIDタグの選定ポイント

タグは貼付対象の材質(紙、プラスチック、金属、液体)と使用環境(温度、湿度、薬品)によって最適な製品が異なります。金属面には専用の金属対応タグが必要です。

タグの選び方については「RFIDタグの選び方ガイド」で詳しく解説しています。

RAIN RFIDの技術仕様と規格

EPC Gen2(ISO/IEC 18000-63)規格

RAIN RFIDの通信プロトコルは、GS1が策定したEPC UHF Gen2規格(正式名称:EPC Radio-Frequency Identity Protocols Generation-2 UHF RFID)に基づいています。この規格はISO/IEC 18000-63として国際標準化されており、世界中のメーカーの製品が相互運用可能です。

Gen2 v2 / v3の進化

Gen2規格は継続的に進化しています。Gen2 v2では暗号化認証やセキュリティ機能が強化され、偽造品対策やプライバシー保護が可能になりました。Gen2 v3ではさらにセキュリティが強化され、より高度な暗号アルゴリズムのサポートが追加されています。

最新のGen2規格について詳しくは「EPC Gen2 v3の概要と導入メリット」をご参照ください。

日本での周波数帯と規制

日本国内のRAIN RFID運用形態
項目 特定小電力 登録局(構内無線局/陸上移動局) 免許局(構内無線局/陸上移動局)
LBT あり あり なし
周波数 19チャンネル 6チャンネル 4チャンネル
出力 250mW以下 1W以下 1W以下
EIRP 500mW以下 4W以下 4W以下
ユーザの申請 不要 登録が必要 免許が必要
用途例 小売店舗、オフィス棚卸し 物流倉庫、製造ライン 大規模施設、屋外運用

特定小電力は免許不要で手軽に始められるため、まずは小規模な実証実験から開始し、効果を確認した後に登録局・免許局への拡張を検討するアプローチが一般的です。申請手続きの詳細は「UHF帯RFID機器の電波利用申請ガイド」で解説しています。

電波出力と読み取り距離の関係について詳しくは「RFIDリーダーの電波出力と読取距離の関係」をご参照ください。

参考資料・外部リンク

FAQRAIN RFIDに関するよくある質問

RAIN RFIDと他のRFID技術(HF/LF)の違いは何ですか?
RAIN RFIDはUHF帯(860MHz~960MHz)を使用し、1m以上の遠距離から数百のタグを同時に読み取れます。HF帯(13.56MHz)は数cm~1mの近距離、LF帯(125kHz)は数cmの近接通信が中心です。RAIN RFIDは物流・在庫管理に、HFは決済・認証に適しています。
RAIN RFIDはどのような業界で使われていますか?
小売・アパレル(棚卸し・在庫管理)、物流・倉庫管理(リアルタイム追跡)、医療・ヘルスケア(機器・薬剤管理)、製造業(品質管理・出荷トラッキング)、イベント・アクセス管理など幅広い業界で活用されています。
RAIN RFID導入時に注意すべきポイントは?
主に5つのポイントがあります:1)システム要件の明確化、2)電波環境の調査、3)リーダー・タグの適切な選定、4)プライバシー・セキュリティ対策、5)運用・メンテナンス計画の策定です。
RAIN RFIDのタグはバッテリーが必要ですか?
いいえ、多くのRAIN RFIDタグはパッシブ型で、リーダーの電波からエネルギーを得て動作するため、バッテリーは不要です。これによりメンテナンスが容易でコストを抑えられます。
RAIN RFIDの読み取り距離はどのくらいですか?
環境や機器により異なりますが、一般的に1m~12m以上の読み取りが可能です。特定小電力(250mW)では数m程度、登録局・免許局(1W)ではさらに長距離の読み取りが可能です。
RAIN RFIDタグの単価はいくらですか?
量産効果により年々低下しており、一般的なラベル型タグで1枚あたり数円~十数円程度です。金属対応タグや高耐久タグは数十円~数百円になることもあります。発注量やカスタマイズ内容により価格は変動します。
RAIN Allianceとは何ですか?
RAIN Allianceは、UHF帯RFID(RAIN RFID)技術の普及と標準化を推進するグローバルな業界団体です。Impinj、NXP、Zebra Technologies等が参加し、技術仕様の策定、相互運用性テスト、ユースケースの共有を行っています。
日本でRAIN RFIDを使うには免許が必要ですか?
運用形態によります。特定小電力(250mW以下)は免許不要で利用可能です。登録局(1W・LBTあり)は総務省への登録申請、免許局(1W・LBTなし)は免許申請が必要です。多くの小売・オフィス用途は特定小電力で対応可能です。
RAIN RFIDとIoTの関係は?
RAIN RFIDはIoT(モノのインターネット)のエッジデバイスとして機能します。タグで取得したデータをクラウドに送信し、在庫状況やサプライチェーンの可視化をリアルタイムで実現します。RESTful APIやMQTT対応のリーダーにより、IoTプラットフォームとの統合が容易です。
RAIN RFIDは金属や液体に対応できますか?
標準的なRFIDタグは金属面や液体の影響を受けやすいですが、金属対応専用タグ(例:Confidex Ironside)を使用すれば金属面でも安定した読み取りが可能です。液体が入った容器の管理にも、適切なタグ設計と取り付け位置の工夫で対応できます。

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