この記事では、RFIDとバーコードを併用するときに決めておくべき4つのこと、つまり「番号をどう対応付けるか」「ラベルにどう配置するか」「工程ごとにどちらを使うか」「読めないときにどうするか」を順に解説します。RFIDとバーコードの基本的な違いは「RFID 対 BARCODE」をご覧ください。
なぜ「置き換え」より「併用」なのか
RFIDは、見えないタグや大量のタグを一度に読めるのが強みです。一方で、次のような場面ではバーコードの方が適しています。
- 1点だけを確実に指定したいとき:RFIDは近くのタグもまとめて読むため、「このラベルの1枚だけ」を指定する操作はバーコードの方が確実です。
- 取引先がRFIDを読めないとき:出荷先や物流会社がバーコードで運用している場合、ラベルにはバーコードが必要です。
- タグが壊れた・読めないとき:タグの故障や、金属・水分の影響で読めない場合の代わりの手段になります。
- 人が確認するとき:バーコードの下の数字(人が読める文字)で、目視で照合できます。
つまり、RFIDは「まとめて速く」、バーコードは「1点を確実に、誰でも」という役割分担になります。この前提に立つと、設計の中心は「両方の番号を同じ物に結び付け、どちらで読んでも同じ物として扱えるようにすること」になります。
決めること1:番号の対応付け(データ設計)
併用設計でまず決めておきたいのが、バーコードの番号とRFIDタグの番号(EPC)の関係です。考え方は大きく3つあります。
| 方式 | 内容 | 長所 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| A. 規格で変換できる番号にする | GS1の規格に沿って、商品コード(GTIN)とシリアル番号からEPC(SGTINなど)を作る | 対応表がなくても相互に変換できる。取引先と共通 | GS1の事業者コードが必要。規格の理解が必要 |
| B. 同じ社内番号を両方に入れる | 管理番号をバーコードにし、同じ番号をEPCに書き込む | 単純で分かりやすい | 社内でしか通用しない。番号の桁数や文字種に制約 |
| C. 対応表で結び付ける | タグ固有のID(TID)や任意のEPCと、バーコード番号をデータベースで結び付ける | 既存の番号体系を変えずに済む | 対応表の登録漏れ・不整合が起きやすい |
小売・物流など取引先とデータをやり取りする場合は、方式Aが基本です。GS1のEPC規格(GS1 EPC Tag Data Standard 2.3(2025年))では、たとえばSGTIN-96という形式で、商品コード(GTIN)に最大38ビット(約2,749億通り)のシリアル番号を組み合わせて、個品ごとに一意の番号を作ります。GTINはバーコード(JANコードなど)と共通なので、「同じ商品の何番目の1点か」をRFIDとバーコードの両方で表せます。GS1の番号体系は「GS1スキームの解説」で詳しく解説しています。
社内の資産管理だけで使う場合は、方式Bでも十分です。ただし、後から取引先や他部署と連携する可能性があるなら、最初から方式Aに沿った番号にしておくと移行が楽になります。
データベースの持ち方
どの方式でも、データベースには「1点の物」を表すレコードを1つだけ作り、そこにバーコード番号・EPC・TID(必要なら)をすべて持たせます。読取の結果は、バーコードから来てもRFIDから来ても、同じレコードの更新として扱います。こうすると、工程ごとに読み方が違っても、在庫数や履歴が二重にならずに済みます。
決めること2:ラベルのレイアウト
RFIDラベルにバーコードも印字する場合は、タグのICとアンテナの位置を意識して配置します。
- ICの真上を避ける:ICの部分はわずかに盛り上がっているため、その上に細いバーを印字するとかすれやすくなります。バーコードはICから離した位置に置くのが一般的です。
- 静かな余白(クワイエットゾーン)を確保する:バーコードの左右には、規格で決められた余白が必要です。ラベルが小さいと余白が不足しがちです。
- 人が読める文字を必ず入れる:管理番号やGTINの文字を印字しておくと、読めないときに手入力できます。
- RFIDマークを表示する:ラベルにRFIDが入っていることを示すと、作業者や取引先が扱いに気付けます。
プリンタでRFIDの書き込みとバーコードの印字を同時に行う場合は、両方を同じ1点の番号から作るようにプリンタのフォーマットを設計します。書込に対応した機種は、RFIDプリンタの製品一覧で確認できます。
決めること3:工程ごとの使い分け
併用の効果は、工程ごとに「どちらで読むか」を決めることで生まれます。代表的な例を示します。
| 工程 | 主に使う方式 | 理由 |
|---|---|---|
| ラベル発行・タグ書込 | 両方(同時に作る) | 番号の対応をこの時点で確定させる |
| 入荷検品 | RFID(一括) | 箱を開けずに数をそろえて確認できる |
| 棚入れ・ロケーション登録 | バーコード(棚番)+RFID(商品) | 棚番は1点指定が確実。商品はまとめて登録 |
| 棚卸 | RFID(一括) | 作業時間の短縮効果が大きい |
| ピッキング・個別確認 | バーコードまたはRFIDの探索機能 | 「この1点」を確実に指定する |
| 出荷・取引先への引き渡し | 両方 | 取引先がバーコードで受ける場合に備える |
| 例外処理(読めない・破損) | バーコード・手入力 | 代わりの手段として使う |
この割り当てを決めておくと、必要な機器も見えてきます。たとえば、棚卸ではRFIDを、ピッキングではバーコードを使うなら、RFIDリーダーとバーコードスキャナーを両方内蔵したハンディ端末が適しています。機種の選び方は「ハンドヘルドRFIDリーダーの種類と選び方」をご覧ください。
決めること4:タグが読めないときの手順
RFIDの読取率は、環境と対象物によって100%にならないことがあります。併用設計では、読めなかった場合の手順をあらかじめ決めておきます。
- 検知:RFIDで読んだ数と、予定数(伝票やシステムの在庫数)を比べ、差を表示する
- 探す:差が出た物を、ハンディの探索機能(近づくほど音が変わる機能など)で探す。探索の考え方は「RFIDによる検索機能の最善策」で解説しています。
- 代わりに読む:見つかったがRFIDで読めない物は、バーコードで読んで登録する
- 記録して直す:読めなかったタグを記録し、ラベルの貼り直し・再発行を行う。同じ品番で多発するなら、タグの種類や貼る位置を見直す
この手順を画面と運用ルールに組み込んでおくと、RFIDを導入した後も現場が止まりません。
段階的な移行の進め方
既存のバーコード運用からRFIDに広げる場合は、次の順番で進めるとリスクを抑えられます。
- 番号体系を決める:方式A〜Cのどれにするかを決め、既存のバーコード番号との関係を整理する
- ラベルを併用型にする:新しく発行するラベルを、RFIDとバーコードの両方を持つものに切り替える
- 一括処理の工程からRFIDを使う:効果の大きい棚卸や入荷検品からRFIDを使い始める
- 例外処理を整える:読めなかった場合の手順を運用に組み込む
- 範囲を広げる:効果を確認しながら、他の工程や拠点に広げる
導入でよくある失敗は「RFID導入の失敗例と対策」にまとめています。
併用設計のチェックリスト
設計を固める前に、次の項目を関係者(現場、情報システム、取引先窓口)で確認しておくと、後からの手戻りを減らせます。
- 番号:バーコードとEPCの対応付けの方式(規格で変換・同じ社内番号・対応表)を決めたか。シリアル番号の採番ルールと、重複を防ぐ仕組みはあるか
- ラベル:ラベルの大きさ、インレイの位置、バーコードの種類と位置、人が読める文字を決めたか。試し刷りで両方が読めることを確認したか
- 機器:工程ごとに、RFIDリーダー・バーコードスキャナー・両対応の端末のどれを使うかを決めたか
- システム:どちらで読んでも同じレコードを更新する仕組みになっているか。RFIDで大量に届く読取データの重複をまとめる処理はあるか
- 例外処理:読めなかった物の検知・探索・代替登録・再発行の手順と担当者を決めたか
- 取引先:出荷先がRFIDとバーコードのどちらを必要としているか、ラベルの仕様に指定はないかを確認したか
このチェックリストのうち、番号とラベルは後から変えるほど費用がかかる項目です。最初の発行を始める前に、必ず決めておきましょう。
関連製品
- RFIDとバーコードを両方読めるハンディ:Chainway C72、ATID AT388
- RFIDとバーコードの両方に対応したスキャナー:Zebra DS9908R
- RFIDラベルプリンタ:Chainway CP30、Zebra ZD621R